不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

015 「石」

 高校1年の夏の終わりから秋の始めの頃の出来事です。私の通っていた高校は美術と音楽を専門に学ぶ当時としては比較的珍しい高校でしたので全国から生徒が集まっていました。

中でも大阪から来ていたM君とは妙に馬が合いいつも行動を共にしていたのですが、彼のおばあちゃんが霊能者であることが原因でもないのでしょうが、M君と一緒にいると何故か小石が飛んで来るのです。最初の内は驚いたり珍しがったりしていましたが、体を直撃する訳でもなく、1センチか2センチくらいの小石が半径3メートルの範囲にどこからともなく飛んで来ることに馴れっこになっていました。

ある日の放課後M君と二人で神社の近くにあるクラスメートの寮に遊びに行こうという事になり、近道である住宅街の裏道を歩いていました。その狭い道は土手のようになっていて、右側のガードレールの向こう側は五、六メートル高低差で川が流れていて、左側には古い民家が並んでいました。M君と私はほとんど横並びで歩いていました。厳密に言うと左を歩くM君よりほんの少し遅れて右側を私が歩いていたのですが、真横から見てもM君の後頭部と私の鼻先は十センチも離れていなかったと思います。

突然とはああいった時のことを言うのでしょうか、私の目の前を何かが物凄い勢いで右から左へ横切ったかと思うと、すぐ左の民家の雨戸を直撃したのです。『ドン』という大きな音で二人は同時に民家の雨戸を見たのですが、それはこぶし大の石でした。空き家だったから良かったものの、もしそれが普通の民家で、中に人が居たなら間違いなく我々が疑われていたところでした。  



「俺のここの所をかすめて行ったぞ、シュッて…」

後頭部を擦りながらそう言うM君に、私の目の前を横切ったことを話すと更に驚いていました。どちらかに当たらなかったのは奇跡でした。石は地面とほぼ平行に飛んで来たのですが、川の向こう側には人影は無かったし、向う側の土手まで五十メートル以上の距離があり、誰かが投げたとは考えられませんでした。河原にも誰も居なかったのです。

その後も卒業までに何度か石は飛んで来ましたが、あれだけ大きな石が飛んで来たのは後にも先にもその一度だけでした。



コオロギのアトリエ