不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

018 「デコボコ」

高崎山の麓にアトリエがあった頃のお話です。アトリエから高崎山の脇にある銭瓶(ぜにがめ)峠を下って別府の流川通りにぬける道を利用すると、およそ二十分で別府に行くことが出来ます。大分の市街地に出るのにもその位の時間がかかりますので、途中に少々道の狭い所もあるのですが別府に用事があるときは必ずその道を利用していました。
  
ある日、画家のTさんがアトリエに遊びに来られた時にその道の話になったのですが、Tさんは面白いことを言うのです。その道の途中にデコボコの部分があると言うのですが私には心当たりがないのです。詳しくその場所を尋ね、お互いにそのポイントを確認した上でも私にはそこがデコボコしているとはどうしても思えないのです。

その場所というのは、ちょっとした崖になった細い道で、別府方面に向かって進むと、左側が山の壁になっていて、右側が谷になっているのですが、ある日Tさんは余りにもデコボコがひどいので車を降りて道を確認したらしいのです。Tさんは、左の山と右の谷には、数多くの古い墓があり、どうもかつては墓地であった所に無理やり道を造ったのだろうと言うのです。



デコボコの原因は道路の表面に露出した墓石の頭の部分だったと言うのです。そういえば確かに道の脇に墓石があったようにも思いますが、道は狭いながらもちゃんと舗装されていますし、いくらなんでも墓をそのまま埋めるとは考えられません。
 
私はそれ以来そこを通る度にスピードを緩めて注意深く観察してみるのですが、確かにTさんの言うように道の両脇に古い墓はありましたが、道に露出した墓石などはありませんでした。

もしかすると舗装された道の下には古い墓がそのまま埋まっていて、Tさんにはそれが見えているのかも知れません。


コオロギのアトリエ