030 「ネームプレート」
つい最近、親戚の叔父の葬式で叔母から聞いた不思議な話です。式まで少し時間があったので親戚一堂はロビーにたむろしてそれぞれが昔話に花を咲かせていました。その内一六年ぶりに会うある遠くの町に住むおばちゃんが突然こんなことを言い始めたのです。
「たかしちゃん、このあいだとても不思議なことがあったんよ」
このような状況で唐突に、しかも名指しでそのように切り出されるとチョッと怖いものがあります。叔母が言うにはこうです。
2ヶ月ほど前、買い物に行くために国道を歩いていたところ、空から小さな紙切れが降ってきておばちゃんの足元に落ちたらしいのです。何気なくその紙切れを拾ってみたところその紙切れには何と私の名前が筆文字で書かれていたというのです。
叔母は不思議なこともあるものだと言っていましたが、それはそんなレベルではないことは私が一番良くわかっていました。その紙切れは3センチ×12センチほどの展覧会などで使うネームプレート位の大きさだったらしいのですが、実は前にその町のある場所で確かに展覧会をしたことはあるのです。もしかするとそのようなネームを使ったのかもしれません。
しかしその展覧会は五年も前のことなのです。