038 「雨乞い」
人として生活していく上でどうしても避けて通れないのが地域との係わりです。「定期の集会」や「草むしり」、「神社の掃除」や「地域の運動会」、近所づきあいが余り得意ではない私にとってはどうも苦手な分野なのです。
それは去年の夏のことです。「地域の盆踊り」に参加しなければならないということになりました。盆踊りなど生まれてこの方、踊ったことがないのです。それはどうしても辞退することのできないというので困り果てていました。
公民館で踊りの練習があると言うので行ってみれば30~40人いる女性の輪の中で男性は自分だけで、その時点ですでに私一人だけが浮いてしまっています。そこに持ってきて動きはロボットみたいになっていますから目だってしょうがありません。結局どうしても踊りを覚えられないまま本番前日を迎えます。
本番に着ていく浴衣に袖を通してみれば丈が異常に短く、「バカボン」みたいになっています。年に一度の晴れの舞台で、長身のバカボンがロボット踊りをするのです。これはもうアウトです。こうなったら盆踊りを中止させるしか方法がありませんから禁断の「あれ」を使うことにしました。
そうです「雨乞い」です。私は年に2度までなら雨を自由に降らせることが出来ると勝手に思い込んでいますので、早速雨乞いです。もちろん当日は朝からの雨で夕方まで降り続いた雨のため盆踊りは中止になりました。が、雨は夕方から豪雨に変わり、ちょっとした台風のようになってしまいました。
自分にそこまでのパワーがあったのかと正直驚いたのですが、数日後、近所のおばちゃんたちの立ち話を偶然耳にして納得しました。
A「盆踊り中止になってよかったわぁ。わたし出たくなかったのよ」
B「わたしも踊りヘタクソやから、いっそ雨でも降ってくれればと思っていたのよ」
C「わたしも。雨降れ~雨降れ~て、雨乞いしたわよ」
どうも雨乞いをしたのは自分だけではなかったようです。
コオロギのアトリエ