不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

042 「UFO」

    この話は不思議な話しではなく驚いた話です。当時私がまだ釣りに凝っていた頃のこと、これまたどうかしたのではないかと言うくらいの釣り好きの知り合いがおりまして、ある日、「〇〇造船のテトラポットがメチャクチャ釣れる。今夜忍び込もう」と目をキラキラさせながら言うものですから、いけない事とは知りつつも日が暮れるのを待って監視員の目を盗んで正門を乗り越えるのですが、建物の影から影を忍者のように移動しながら目的のテトラポットまでたどり着くまでにエネルギーと集中力を使い果たし、期待したほどの成果はありませんでした。

11時頃に釣りを終え帰路に着くのですが、その頃には従業員の人影も無く私達の緊張感もなくなっているものですから、敷地の隅っこを普通に歩いてしまっていました。途中に建物もまばらで、だだっ広いグランドみたいな場所があるのですが、それはそこで起こりました。突然、真っ暗な空から一筋のスポットライトが我々を照らしたのです。

一瞬何が起こったのか理解できませんでした。うずくまった彼の影がほこりっぽい地面の上でゆっくり方向を変えるのを見ながら私はほとんどパニックになっていました。あまりにも突然でしたし、全ての色が飛んでしまう位の光が眩しかったせいもあるのですが。そこから逃げだすことも出来ず、逆に額に手をかざして上空を見上げていました。

どのくらいの時間そうしていたのか「ヴァン!」という音がしたのかどうか定かではありませんが、そんな感じで、突然光が消えたのです。夜空は相変わらず真っ暗でしたが、目を凝らすとその真っ暗な空のシルエットをバックにして更に黒い塊がそこに浮かんでいたのです。



15メートル位の上空でゆっくり方向を変える全長20メートル位のそれは太い「葉巻」のような形をしており、徐々に高度を下げ、何と、事もあろうにグランドの向こう端に着陸したのです。彼は急いでここを出ようと言いましたがこんなチャンスは一生に一度、いや、二生に一度もあることではありません。見に行こうという私の言葉に彼はこう反応しました。

「宇宙人が出てきたらどうするのか?」

40に近いオヤジの口からその言葉をナマで聞いたのは生まれて初めてでした。普通ならそこで大笑いするところですがその時は違いました。

「だから見に行くのよ!もしかしたら連れて行ってもらえるかも知れんぞ…」

「…どこに?」

「向こうの星…」

しばしオヤジどうし見つめ合いましたが、気がつけばどちらからともなく着陸したそれに向かって歩き始めていました。

           つづく

コオロギのアトリエ