不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

049 「うしろむき」

 その峠の道は最近舗装が完了したばかりの正面に別府湾を望みながら長い坂を下るというチョッとお気に入りのドライブコースです。その日も別府に用事があり、午後2時頃にアトリエを出てその素晴らしい景観を満喫しながら長い坂を下っていました。

その道路には立派な歩道が完備されているのですが、その歩道に珍しく人の姿がありました。今まで一度もそこを歩く人を見かけたことがなかったものですからチョッと不思議な感じがしました。というのは、その長い直線コースには民家は一軒しかなく、もしその家の住人が近くの民家を訪ねるために歩いているのだとしても、そこから坂の上の民家までは歩きだと有に1時間はかかる距離なのです。

最近はダイエットとか健康の為に歩く人がいるので、おそらくその類なのだろうと自分を納得させたのですが、車がその女性に近づくにつれ奇妙なことに気付きます。手の振り方が異常に大きいのです。両手をまっすぐに伸ばし規則正しいリズムで肩の高さまで振り上げているのです。しかも顔の部分は髪の毛で覆われています。



『何なのだろう』と思った瞬間、無意識に車のスピードをゆるめていましたが、何とその女性は後ろ向きに坂道を登っていたのです。私がその女性を見つけてから一度も後ろを振り向いていませんから少なくとも7~8メートルは後ろ向きのまま歩いていることになります。別府湾の美しい景色に見とれてそうしているのかとも思いましたが、女性の横をゆっくり通り過ぎながら肉眼とバックミラーで確認した時、そうではないことがわかりました。

何故ならその女性の目はシッカリ閉じられていたのです。でも何故か口は大きく開けていました。その直線コースが終わるまでバックミラーで確認しましたが、その表情を変えることなく後ろ向きで歩き続けていました。

後になって思ったのですが、人の腕は後ろ側に肩の高さまで上がるものなのでしょうか…


コオロギのアトリエ