不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

051 「異形」

  見間違いはよくあることです。それは距離的なことであったり、確認する時間が短すぎたり、思い込みや過剰な想像力によってそのように見えてしまったりするのですが、私は昔から納得のいかないものに遭遇したときはそのようなことがないように、出来る限り近くで時間をかけてそれを確認するようにしています。

時にはわざと距離を置いて自分の想像力の限界を試したりして楽しむことはあるのですが、近づいて観察できるものに関しては最終的にはそれが何であるのかの答えは必ず出すようにしてきました。しかし、一五年前に遭遇した「それ」に関しては八十センチの至近距離で確認したにもかかわらず、それが何であるかを判別できなかったのです。

それは夏の夜のことでした。その日は妹夫婦の家で食事をご馳走になり帰宅の途についたのが夜中の十一時過ぎでした。自宅までは車で十五分の距離なのですが、道路の両脇がほとんど田んぼと畑ばかりのその道路はこの時間になると真っ暗で、車の数もめっきり少なくなるのでヘッドライトの明かりに照らされた範囲だけが唯一の視覚による情報源となります。

ほぼ直線のバイパスはともするとついついスピードを出し過ぎてしまうのですが、夜間のスピード違反の取締りを行っている確立が高いことも知っていますので、ほぼ制限スピードで車を走らせていました。途中に小さな商店と神社の間の200メートルくらいの区間が少し上り坂になっているのですが、そのちょうど中間くらいのところに「それ」はいたのです。



最初はハイビームの状態でそれを確認しましたから、かなりの距離があったのですが「それ」は道路の左側の一段高くなった歩道と車道の境にいるのは確認できました。その時点では「鳥」だと思いましたからスピードは落とさずにそのまま車を走らせたのですが、車が近づけば逃げてしまうだろうと思っていた「それ」は二十メートルの距離まで近づいても飛び立とうとはしませんでした。というか、かってに白い大きな鳥だと決めつけていた「それ」は鳥などではなかったのです。 

つづく


コオロギのアトリエ