不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

053 「ナナちゃん」

  まだ「ナナちゃん」が子犬の頃の話です。子犬たちの中でも一番好奇心が旺盛な「ナナちゃん」は他のワンちゃん達とは別のスペシャルな散歩コースでした。そのコースの途中にチョッとした草むらというか、藪があります。そのやぶの中に潜り込むのが当時の「ナナちゃん」のお気に入りとなっていたのですが、適当なところで軽くリードを引っ張ればニコニコしながら出てくるはずが、その日に限ってなかなか出てきません。

どうしたのかと思い少し強く引っ張ってみても、それでも出てくる気配がありません。心配になって「ナナちゃん」の名前を呼びながら藪の中を覗き込んでいると、何と私の横で「ナナちゃん」も一緒に覗き込んでいるのです。 

「ナナちゃん」と藪の中に伸びたリードの先を何度も見比べながらそのマンガみたいな状況にチョッと笑ってしまいましたが、そのうち「ナナちゃん」はひとりでどこかへ行ってしまうし、リードは藪の中で何かとつながったままだし、藪の中のものを想像してしまうとメチャクチャ怖いし、チョッとしたパニックです。



走り回る「ナナちゃん」を何とか捕獲し、恐る恐る藪の中のリードをチェックするとリードの先の金具が首輪にとめる状態で細い木の枝に「カチッ」と綺麗にとまっていました。どのような偶然が重なればそのようなことが起きるのでしょうか。

それからも何度もその藪に「ナナちゃん」はもぐりこみましたが、二度とそのようなことは起こりませんでした。



コオロギのアトリエ