055 「キラキラ」
数年前のお盆の話です。市内にあるお寺で墓参りを済ませ、その足で母方の実家に顔を出すのが毎年お盆の恒例となっているのですが、その年は母と私と妹と妹の娘(当時10歳)の4人でお邪魔することになりました。
実家には母の兄嫁が一人で暮らしており、母と年齢が近いということもあって、いつものように二人だけの思い出話でもりあがっていました。
その間、居間のソファーに腰掛ける我々3人はひたすら話が終わるのを待つだけなのですが、突然、妹の娘が私にこう言います。
娘「おばちゃんは一人暮らしよね?」
私「うん、なぜそんなこと聞くの?」
娘「あそこに誰かいるよ」
居間と廊下はスリガラスの引き戸で仕切られており、その廊下の端は階段になっているのですが、妹の娘の視線の方向を見ると、確かにその階段の途中に何かがいました。それは光の集合体のようにキラキラしながら階段を下りてきました。
スリガラス越しですが、それは明らかに人の形をしており、白のランニングシャツにブルーの短パン姿だということがわかりました。妹もそれに気づいているようでそれの動きを目だけで追っています。それは廊下の端まで移動して視界から消えましたが、それは2年前に亡くなられたおじさんのお気に入りの夏のコスチュームに間違いありませんでした。
三人で顔を見合わせ、今起きたことが幻覚ではないことを確認しているとき、何ともう一度同じことが繰り返されたのです。階段を下りてきた光の集合体が前にも増してキラキラ輝きながら一度ガラス戸の前で立ち止まり、こちらに顔を向けた後、廊下の端に消えたのです。感覚的には「怖い」というより、逆に「やさしさ」とか「懐かしさ」に近い感覚でした。
母とおばちゃんは話に夢中でそれを見ていませんでしたが、なぜかその時はそのことを二人に伝えることはしませんでした。
集団で幻覚を見ることは稀にあるそうなのですが、見ることに関しては商売柄かなりの自信を持っていますのでハッキリ言えますが、あれは幻覚などではありませんでした。
コオロギのアトリエ