060 「UFO-3(後)」
5メートル先に浮かぶ小さなUFOの開いた開閉口を見つめながらKさんの衝撃的な次の言葉を待ちました。小さなグレー色の宇宙人とかを期待していたのです。
K「蜘蛛だよ」
私「……クモ?」
その瞬間に現実に引き戻された私は机の下のそれに近づいて20センチの至近距離で確認させてもらいました。それは直径10センチほどの枯れた丸い木の葉が一本のクモの糸によって机の上部からぶらさがっただけのことでした。クモの糸が木の葉の丁度中心にくっついているのでクーラーの風でユラユラといい感じで揺れていたのです。開閉口は虫食いの穴でした。
K「驚いたねぇ、僕はてっきりUFOだと思っていたよ。何だかガッカリだねぇ」
ガッカリしたのは私のほうでした。Kさんの言葉を鵜呑みにした自分にガッカリしたのです。
教訓その1、人として生きていく上で、ある程度の想像力は必要だが、度を過ぎた想像力はそれがリアルであればある程ほど期待が裏切られた時のショックは大きい。
コオロギのアトリエ