不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

062 「ガラス」

 子供の頃の話です。当時暮らしていた我が家の隣は家一件分の空き地になっていて、裏は小川を挟んですぐ山でしたから近所の子供達が遊ぶのには最適の場所でした。ある時期、男の子の間で「ゴルフ」という遊びが流行ったことがありまして、山から取ってきた木で手製のゴルフクラブを作り、適当な小石を山に向かってひたすら打つという至ってシンプルなものです。

ただそれだけのことなのですがそれが楽しくてしょうがありませんでした。ところが小石がまっすぐ山に飛んでいくとは限りません。時々とんでもない方向に飛んでいくことがあります。その空き地と平行している私の家の廊下のガラス戸が被害にあわないわけがありません。そのガラスが特殊なサイズ(90センチ×180センチ)なので代金がバカにならないと親はカンカンなのです
が、私もその遊びに加担しているため強くはいえませんでした。

ある日、その廊下から空き地で「ゴルフ」をする友達をガラス越しに見学していたときのことです。ひとりの友達が思いっきり打ったゴルフボール大の小石が真っ直ぐこちらに飛んできたのです。ちょうど目に向かって飛んできましたから大怪我は免れないことは覚悟しました。しかし、ガラスを割って親に叱られるのだけはどうしても嫌でした。

ああいう時と言うのは状況がスローモーションで見えるもので、空き地で悲鳴を上げる友達一人ひとりの顔や飛んでくる石の形状や回転方向、石がガラスに当たった時の音やガラスの歪み、それをほぼ15センチの目前で確認しながらそれなりに覚悟を決めていたのですが、なにか様子がおかしいのです。

石が当たった場所を中心にしてガラスに波紋が出来ているのです。水面に小石を投げたときのようなあの波紋です。すべてスローモーションで見えていますからその波紋が美しく揺らめいているのも確認できます。



不思議なことにガラスは割れませんでした。石はガラスに跳ね返されたのです。そこにいた全員が悲惨な結果を想定していたものですから、意外な結末にとても驚いていました。ただ、その後2日間くらい首の後ろに妙なシビレが残っていたのを覚えています。


コオロギのアトリエ