不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

069 「ヒカリモノ」

 山奥のアトリエでの事です。そのアトリエは使われなくなった民家をお借りしてアトリエとしていたのですが、それは々山深い場所にあり、周りを山で囲まれた渓谷のようなところにありました。周りにほとんど民家はなく、50メートル隣に一軒と300メートル離れた谷の向こう側に2軒の民家があるだけでした。集中して描くには「持って来い」の環境ではありました。

2階建ての1階を大作用のアトリエとして使っていたのですが、部屋の障子は取り外して廊下のサッシを開けると外の風景の一部になったような感じが好きで春先から秋口まではたいがい開けっ放しでした。

ある日トイレから戻ると今まで使っていた「水入れ」が見当たりません。アクリル絵の具を溶くための銀色のスチール缶なのですが、さっきまで使っていたのにどこを探しても見つからないのです。不思議なこともあるものだと次の日に新しいスチール缶を持ってきたのですが、今度は2階で用事を済まして戻ってみると無いのです。

これは問題ですから次の日、部屋を出る振りをして影から様子を伺っていますと、何と大きなカラスがどこからともなく廊下に舞い降り、周りを伺いながら部屋に入って来るではないですか。と、まだ水のタップリ入ったスチール缶をくわえたかと思うとそのままどこかへ飛んで行ってしまいました。缶を何に使うのかは知りませんが、カラスが光り物を好むというのが本当なのだと言うことはわかりました。

そう言えばなくなったのは缶だけではないのです。いつの頃からラジカセも見当たらなくなっていました。



ちなみにシルバーのカッコイイやつでしたが…


コオロギのアトリエ