不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

081 「ツレ」

 福岡時代の話です。夕食はいつもアーティストのKさんと一緒で、その日は近くのファミリーレストランで食事をすることになっていたのですが、Kさんが食事の前にチョッとした用事を済ませたいと言うので時間を指定して別々にレストランに向かいました。

レストランの入り口でKさんと合流して、4人掛けのテーブルの席に向かい合わせで座るのですがKさんの隣に見知らぬ女性が座りました。年の頃なら40代後半の一見学校の先生のような印象を受ける「スッ」とした女性です。ところがKさんはいつまでたっても女性を紹介してくれません。

それぞれに食事を注文して、食事が運ばれて来るまで全く女性のことに触れないのです。その女性も一言もしゃべりませんでした。私はKさんと女性の間に何らかの特別な事情があり、それで話しづらいのだろうと思い食事をしながら失礼のないようなタイミングでKさんに女性のことを聞いてみました。ところがその女性はKさんの知り合いではなかったのです。



Kさんは逆に私の知り合いだと思っていたらしく、それなりに気を使ってくれていたものですからその女性のことになかなか触れられなかったらしいのです。女性に直接訊ねてみたのですが、ひたすら食事をするだけで質問には一切答えてくれません。結局完食をしてコップの水を飲み干した女性はサッサと席を立ち、呆気にとられている我々を残してレストランから出て行ってしまいました。

しばしKさんと見つめ合ったあと、とりあえず黙って食事を再開するのですが、「どう言うことかね?」とKさんが口を開いたのをきっかけに怒涛のように今起きたことの事実を確認しあうわけですが女性の正体は想像の域を出ることはありませんでした。
お陰でその日は余分に払う食事代以上の滅多に経験できない貴重な経験をさせてもらいました。


コオロギのアトリエ