082 「50円玉」
小学生の頃の50円玉は今の500円玉くらいの大きさがあり、穴の開いたものと開いていないものの2種類があったように記憶しています。当時50円あれば駄菓子屋でゴムを原動力にしてプロペラを回す飛行機が買えていましたから、価値的にもそれ位はあったと思います。
それは秋も深まったある日のことです。その日は珍しくひとりで学校から帰宅するのですが、当時はアスファルトの道路ではなく、学校から家まで全てが土の道でした。その内の半分はやたらと広い道で、その道をトラックが頻繁に行き来するものですから、いつもほこりっぽかった印象があります。
その広い道が200メートル位の直線になっている所があるのですが、その道のちょうど中間あたりで秋の午後の日差しを浴びながら燦然と輝く50円玉見つけたのです。辺りに人がいないのを確認してその50円玉を拾い上げようとドキドキしながら手を伸ばした正にその時です。
50円玉の周りに一瞬閃光が走ったかと思うと「ピキ―ン」という金属音と共に50円玉は消えてなくなったのです。何が起こったのか見当もつきませんでしたが、異常な出来事に遭遇したショックと指先のピリピリした感じが恐ろしくて家まで走って帰ったのを覚えています。
今思えればカミナリがその50円玉に落ちたのかとも考えられますが、それにしては全くの晴天でしたし、あまりにもピンポイント過ぎます。
それからというもの、なぜかお金には縁がないのです。
コオロギのアトリエ