225 「ベタ」
妹から「ベタが卵を産んだので見に来てほしい」と連絡をもらったのは1週間前のことです。『ベタ』とはタイに生息する熱帯魚で空気呼吸が出来る為小さな水槽や場合によってはグラスの中でも飼育可能な魚です。その逞しさゆえに最近では『UFOキャッチャー』の景品にもなっているらしく、妹の子供が持って帰ったのを水槽で飼っていたらしいのです。
とりあえず卵を別の水槽に移すように支持し翌日見に行ったのですが、イメージしていたのとチョッと違っていました。泡に包まれた小さな卵をイメージしていたのですが水槽の底にイクラくらいの透明な丸いものが50個くらい沈んでいたのです。
そのひとつを摘まんでみるとかなりの硬さがあり、一見プラスティックのような感じを受けましたが更に力を加えてみるとボロボロと細かく崩れます。すごく硬い寒天のような感じでした。不思議なのはその量で、卵らしきものを全部集めると、どう見てもベタの個体よりも体積が大きくなるのです。
『本当にベタが産んだのか』という問いに『夜寝る前は水槽には何もなかったのに、朝起きたらこれがあったからベタが産んだに違いない』といいます。不思議なこともあるものだと水槽の丸いものを眺めているところに妹の長女が帰ってきてこう言います。
「このベタ、オスだよね…」
あれから1週間になりますが水槽の透明なイクラには何の変化もないとのことです。
コオロギのアトリエ