不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

315 「物質化」

インターネットで素敵な手作りの腕時計を販売しているサイトを見つけたのは2年前の事でした。1点1点がとても魅力的で、腕時計と言うよりは腕に装着するアート作品のようでした。どうしてもひとつ欲しかったのですが新作がアップされるとすぐに売れてしまいます。

しばらくアップされ続けているものもあるのですが、購入の決断が揺らぐのは次の作品を期待してしまうからですが、そうこうしている内にそれも売れてしまい結局あとで後悔するということを1年以上も続けます。

ある時『これだ!』というものがアップされ即購入を決めたのですがタッチの差で人の手に渡りました。その後自分の中でそのデザインを超えるものは現れず、そのサイトを見る度にその腕時計を手に入れられなかった事を思い出すのが辛くていつの間のかそのサイトを見なりました。

話は変わり、去年の秋に良い『楠木』が手に入ったのでMさんの誕生日プレゼント用に置物にでもなればと思い彫り進めていた彫刻が出来あがったのでMさんの家に持って行った時のことです。

                            bussituka-s


 
プレゼントですから別に見返りなど期待していなかったのですが何故かお返しを頂ける事になります。そんな事をされては何のことかわかりませんから当然お断りしたのですが、その品物を見てどうしても断る事が出来なくなってしまったのです。そうなのです、何とそれは私が購入しそこなったあの腕時計だったのです。

不思議な事にインターネットの画面でしか見た事のなかった憧れの腕時計を目の当たりにしながら新品のまま数ヶ月間も箪笥の引出しにしまったままだったと言うその腕時計をなぜMさんが購入して、なぜ誰も使用していないのかの説明など全く耳には入りませんでした。

何がどうなったのかは知りませんが、とにかくその憧れの腕時計は今、私の左手首で燦然と輝いているのです。

コオロギのアトリエ