不思議な話(二ーマンのピク詰め)復刻版H

      ー実際に体験した不思議な出来事の記録ですー

359 「21000」

ある特定の色や臭いや音や感触の中に意味はわからないのに懐かしさや恐怖を感じる事がありますが、おそらくそれは遠い昔に体験した感情の記憶の断片で、それは時と共に忘れ去られた記憶だけでなく意識して忘れようとした記憶だったりするのかもしれません。

それは単語や数字にも感じる事があり、私の場合『21000』という数字が異常に気になります。成人してからずっと気になっていて、文字で見るよりも『2万1000円』と音で聞いた方が感情に作用するのです。

何かの金額だということはわかるのですが、なんの金額かわかりませんでした。と言うかあまり良い感じがしないので思い出してはいけない事のような気がしてそのことには出来るだけ触れないようにしてきたのですが、この間偶然電気屋さんで洗濯機を見た時に遂に思い出してしまいました。

  

21000-s

                

中学1年の夏休みにアルバイトとして近くのグランドで地元の放送局が主催する『早朝野球大会』のグランド整備の仕事を朝の4時から7時までの3時間、ほぼ毎日30日間した時に頂いたアルバイト料が2万1000円だったのです。今で言うと5~6万の価値はあったと思います。

それだけなら別に記憶にも残らなかったのでしょうが、封筒に入った、生まれて初めて自分で稼いだ2万1000円を持ってウキウキで家に戻って「ただいま」の「ま」を言い終わらないうちに母親が言います。

「チョット貸してその2万1000円」

なぜ母親がバイト料の金額を知っていたのかはわかりませんが、最新式の洗濯機の前で私の2万1000円は電気屋さんの集金かばんの中に移動してしまったのです。そのショックが2万1000という数字としてトラウマの様になっていたのです。

勿論その2万1000円は未だに返してもらっていません。

コオロギのアトリエ